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連載「伊沢拓司の低倍速プレイリスト
音楽好きの伊沢拓司が、さまざまな楽曲の「ある一部分」に着目してあれこれ言うエッセイ。倍速視聴が浸透しているいま、あえて“ゆっくり”考察と妄想を広げていきます。

 

正直な話、気になっていることがある。

生え際である。

髪の毛の、である。

 

もともと、額は広い方であった。スポーツ刈りで臨んだ高校生クイズ当時の映像などを見れば、ベジータライクな私の生え際をご確認いただけるであろう。

▲「高校生クイズ」の2連覇を達成したあの頃

おそらく、10年経った現在も状態は変わっていない……いや、これは願望かもしれない。実際、祖父は30代から頭部がファイナルフラッシュだったので、私も隔世遺伝の魔の手から逃れられない気がしている。

 

心の備えは、すでに出来ている。日々、シャワーを浴びた後、オールバックになった鏡の前の己に問うのだ。

これはこれでありじゃない?

いやいや、これはハゲじゃない?

 

 

うまいことやると、オールバックの男はカッコいい精悍せいかんで、セットも楽そうだ。カッコいいの権化たるマッチョにも、オールバックが多い。

▲写真はイメージ

生え際さえ気にならなければ、私のなかに確たる選択肢としてオールバックは存在している。

となると、世間におけるオールバックの地位向上に務めねばならない。将来の自らの市民権に関わってくる課題だ。

しかし、昨今のヒットソングにより、オールバックにはまさに逆風が吹いている。

強風オールバック』。普段から短い楽曲をインターネット上で公開しているボカロP・ゆこぴによる作品であり、瞬く間に動画サイトを席巻した。

外出た瞬間 終わったわ
天気は良いのに 進めない

風 強すぎて お亡くなり
定期 定期 的にオールバック

ゆこぴ『強風オールバック』(作詞:ゆこぴ)

シンプルな構成ながら頭に残る歌詞、かわいらしいPV、「あるある」的シチュエーション。流行る要素のオンパレードである。おのれオールバックアンチめ。

まさに世は大シースルーバング時代。将来の自分のためにも、強引な手法でオールバッカーを作るしかない。

つまりは、外出た瞬間にセットが完了する、オールバックニュータウンを造成する必要があるだろう。

最適なオールバックライフのため、歌詞の忠実な再現を目指していこう

外出た瞬間にオールバックになりたい

結論から言おう。『強風オールバック』の歌詞は、非常に再現が難しい。滅多なことがないと、狙ってオールバックにはなれないのだ。順を追って条件を整理しよう。

まず、オールバックに最適な風速を考えたい

正直、一瞬だけならちょっとの風でも前髪は浮く。重要なのは、この曲に歌われているほどの立派なオールバックになるかどうかだ。

ヒントはPVにある。主人公が風で押し戻される描写に注目だ。

▲ここです、ここ

気象庁の定義によると、「何かにつかまっていないと立っていられない」ときの瞬間風速はだいたい秒速30〜40メートルである。PVでは歌愛ユキがずるずると押し戻されていることから、想定の風速を秒速40メートルとしたい。新海誠の800倍!!

▲気象庁「風の強さと吹き方」を加工して作成

しかし、これほどの風速を想定してなお、オールバックになることはそう簡単ではない。

オールバックになるために、的確な方向で風を捉える必要があるのだ。横風では『強風七三分け』になってしまう。正面から風が吹くのを待つしかないのだが……これはなかなかに低確率だ。密集した日本の住宅事情では余計に、である。

▲なりたい自分をしっかりイメージしよう

まずい。オールバックの置かれた現状を鑑みるに、風まかせでは不十分だ。必ず正面に回り込んでくれる、小兵力士のように狡猾な風が必要である

そして、そんなおあつらえ向きな風は、たしかに存在する。

そう、気圧差で生じる風だ。

こうなったら物理に相談だ

理科の授業で習った通り、風が高気圧から低気圧に向かって流れる。気圧の高いところから、低いところへ、空気が移動するわけだ。

そしてこれは、部屋の内外でも同じである。部屋の中の気圧が外より低ければ、風が室内へと流れ込むはずだ。つまり、ドアを開けた瞬間、ドアの内側にいるあなたをめがけて、抜群のエイムで風が吹くのである。

では、どれくらいの気圧を作り出せば、部屋に40m/sの風を呼び込めるのか

様々に調べては見たものの……自分では、2つの空間の間で気圧差によって生じる風の強さを、どうにも計算できなかった。方法自体がわからなかったのだ。

一応、プロっぽい人に聞いてはみよう。

……ってな条件での風速とかを求めたいんですけど、公式とかってあるんですかね?
……少なくとも見たことはないな。難しそう。

お手上げである。

諦めかけたその時……一筋の光明が見えた

ここにきて追い風が吹く

次ページ:ここで伊沢、ピンと来ました。なぜならヒントは〇〇にあったから。

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この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

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