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2. 漢検1級はこうして受かれ!

私は小学6年生のときに初めて漢検1級に合格し、以降断続的にではありますが合計23回合格しました。先日24回目の合格をかけて再び受検したのですが、なんとか今回も安全圏で合格できそうです。

というわけで、丸8年以上を漢検1級に捧げた私が分析するに、漢検1級合格の鍵は過去問題集にあります。もちろん実際の検定の形式を知ることが大切、という理由もあるのですが、実は漢検1級には重要性の高さから何度も問われる頻出問題がある、というのが一番です。

ですが、検定試験である以上、同じ問題を連続して何回も出せません。そのため、2~3年前に行われた検定問題が対策として非常に有効になるのです。

しかし普通の書店には最新の1年分しか置いていないのに対して、必要なのは2~3年前の問題。より深く勉強するためには、目安にして4~5年分が必要になります。

2年以上前の問題集は、Amazonなどで探してみることをおすすめします。

ちなみに、例年新しい過去問題集が発売されるのは、1年度の検定が終わった3月頃。今後受検を考えている方は、昨年度の問題が手に入るうちに書店へ急げ!

続いて、こちらのデータをご覧ください。ここ数回分の漢検1級の合格率に関するものです。

漢検1級について、最近の動向を簡潔に言い表すと、「初心者のハードルはかなり高い」です……。何度も検定を受けてどんどん知識を習得するハイレベルなリピーターに合わせて、ここ数年はどんどん難しい問題が出題される割合が高まっています。

特に、昨年6月の検定(平成28年度第1回)は、書き取り問題を中心に難問が多く出題され、史上屈指の難しさから多くの受検者を苦しめました。

かくいう私も、ここ数年で合格ボーダーラインに最も近づくほどでした。合格者はわずか全国に67人!

たくさんの人に漢検1級の面白さを知ってほしいのですが、自分もまた検定の難易度を引き上げてしまうリピーターなので、なかなか複雑な心境です。

ですが、上の表を見ると回を追うごとに受験者数が減少しています。私の予測では、これ以上の減少に歯止めをかけるため、次回からは年度を通して易しめになるのではないでしょうか。

3. 最新回を徹底解剖! 良い問題、悪い問題

さて、ここからは、先日行われた平成28年度第3回の問題をもとに、検定のレビューを行いたいと思います。一体何のことを話しているの? と興味を持たれた方は、来月発売予定の「平成29年度版 漢検過去問題集1級/準1級」を手に取ってみてください。

(一)読み(1点×30問=30点)

音読みを答える問題が20問、訓読みを答える問題が10問。難易度は全体として標準。

音読み編では過去に出題歴のある基本的な問題が多くを占めていましたが、10「嚼蠟(しゃくろう)」など馴染みのない言葉も少数ながら出題されました。しかし、「咀嚼(そしゃく)」の「嚼」+「蠟燭(ろうそく)」の「蠟」と考えれば、容易に正解できるでしょう。

訓読み編では23「拉ぐ(ひし-ぐ)」が一番の難敵か。実はこの漢字、他動詞として用いると「ひしぐ(=押し潰すこと)」、自動詞として用いると「拉げる(ひしゃ-げる)(=押し潰れること)」と読み方が変化するのです。設問文の細かい箇所にまで気を配らないと正解できない、良問です。

(二)書き取り(2点×20問=40点)

カタカナで書かれた部分を漢字に直す問題が20問。うち2問は「国字(日本で生まれた漢字。漢検1級では約200字が範囲になっている)」で書くことが指定されています。難易度はやや難。

難易度が高かったのは、13「ガチュウ(牙籌)を執る(=そろばんをはじくこと。転じて、店を切り盛りすること)」、16「和漢のカンソウ(翰藻)(=詩・文章のこと)」の2問。どちらも推測では思いつきにくい漢字が用いられており、しっかり勉強していたかどうかで差がつく問題でした。

(一)と(二)はある程度の量の勉強で得点を伸ばすことができ、回による難易度の上下も激しくありません。ここまでの50問で70/200点を占めているので、このボリュームゾーンは確実に正解できるようになりたいものです。

(三)語選択(2点×5問=10点)

言葉の意味が示されていて、それに当てはまる熟語を語群から選んで漢字に直すという形式。ここは難易度の上下が比較的激しいのですが、今回は標準でした。

唯一難問といえそうなのが、4「非望(ひぼう)(=分をわきまえず欲しがること)」。ダミーの選択肢として「貪婪(どんらん)(とても欲深いこと)」が置かれていたので、こちらを選んでしまった人も多いそうです。

先ほどの級別解説の項で触れた、「簡単な漢字だけで構成されたマイナーな熟語」の典型例ですね。

(四)四字熟語(2点×15問=30点)

ここは形式が少し複雑で、前半または後半の2文字が示され、残りの2文字を漢字で書くという「問1」が10問と、意味が示され、それに当てはまる四字熟語を語群から選んで読み方を答えるという「問2」が5問から成ります。難易度はやや易。

問1では半分にあたる5問がいわゆる頻出問題で、4問がたまに出題される標準問題、1問が難問でした。その1問が2「流連荒亡(りゅうれんこうぼう)(=遊びや酒にふけって荒れた暮らしをすること)」。これも上の「非望」と同じタイプの難問だということが、お分かりいただけるでしょうか?

(五)当て字(1点×10問=10点)

この設問は単純明快に、当て字を読むだけです。

全体としての難易度は標準ですが、1「信天翁(あほうどり)」や2「海豚(いるか)」のような一般常識レベルの問題と、7「雀鷂(つみ)(=タカ科に属する鳥)」や8「乙甲(めりかり)(=音の抑揚のこと)」のような少し難しめの問題の間で難易度の乖離が起こっているように見受けられました。

(六)熟語と一字訓読み(1点×10問=10点)

この設問の問題は、ある熟語と、その意味を簡潔に表す漢字1文字の訓読みがセットになっていて、それぞれを読む形式です。たとえば、「1.勝利-2.勝つ」のような感じですね。

ここは比較的基本的な問題が並び、特に難問というべきものもありませんでした。難易度はやや易。

(七)対義語・類義語(2点×10問=20点)

およそ半数の問題は過去に出題されていますが、残る半数は推測力を働かせないと正解にたどり着けない問題です。たとえば、3「盈満(えいまん)(=満ち足りること)」の対義語として出題された「虧欠(きけつ)(=欠けていること)」は、「満」の対義語が「欠」になるという推論を立てることで、比較的容易に正解できるようになっていました。

しかしこの「虧欠」、市販のほとんどの辞書に掲載されていない超マイナー熟語なのです。辞書に掲載されていないということは、すなわち「中国の古典で使用された確実な証拠が薄い」ということ。正直この問題は、あまり良い問題とは言えませんね。

難易度はやや難でした。

(八)故事成語・ことわざ(2点×10問=20点)

ことわざの一部がカタカナになっていて、その部分を正しい漢字で書く問題。今回の難易度はやや易でした。

いつもは初出のことわざが10問中2、3問を占め、合格者平均点も15点前後になるのですが、今回は10問すべてが過去に出題歴がありました。恐らく合格者平均点も18点(=9問正解)を上回るでしょう。

(九)文章題(2点×10問=20点、1点×10問=10点)

江戸時代から大正時代ほどにかけての人物が残した文章を題材として、読み問題と書き取り問題がランダムに配置された複合問題です。回によって文章の読みやすさが激しく上下するのですが、今回はやや難でした。

今回使用されたのは、明治時代の文豪・幸田露伴の『対髑髏(たいどくろ)』、明治時代の思想家・西村茂樹の『陳言一則』、江戸時代の本草学者・貝原益軒の『大疑録』の3本立てでした。それぞれ小説、論説、随筆とジャンルはバラバラですが、どれもこれも決して読みやすい内容ではなく、文脈から正しい漢字を推測する技術も高い水準で求められる内容でした。

サムネイル / Via https://www.youtube.com/c/QuizKnock

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この記事を書いた人

小林 逸人

東京大学文学部を卒業。現在は記事の執筆等は行っていません。

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