あの超人気アニメにも影響!?アニメ作家「ユーリー・ノルシュテイン」

こんにちは。あけましておめでとうございます。ライターの一等兵です。今日は前回に引き続きアニメ映画についての記事です。

アニメといえば、2016年の冬は『ユーリ!!! on ICE』という、フィギュアスケートを題材にした作品が話題になりました(QKでも記事が出ています)。一見いわゆる「腐向け」の作品でありながら、スケートシーンの見事な作画と、無駄を徹底的に削ぎ落とした物語構成や多彩な劇伴などが評価され、幅広い層に支持されました。僕も毎週テレビの前で悶絶していました。

この作品には、その名の通り「ユーリ」という名前のキャラクターが二人も登場します。そのうちのひとりがロシア人の「ユーリ・プリセツキー」でした。


Via http://yurionice.com/

ロシアの妖精と呼ばれる彼の美貌が2016年のアニメを大いに盛り上げたのですが、その陰で、実はもうひとり、ロシア人の「ユーリー」が話題になっていたのです。

その名は「ユーリー・ノルシュテイン」


Via https://commons.wikimedia.org/

ロシアを代表するアニメーション作家です。めちゃくちゃ強引な展開ですが(笑)、今回はこのノルシュテインのアニメーション作品について簡単な紹介を書きましたので、読んでいただけたら幸いです。

ノルシュテインは、1941年に(当時の)ソ連で生まれたアニメーターです。いわゆる「商業アニメ」とは異なる「アート・アニメーション」の文脈で、いくつもの短編作品を残しています。

代表作として日本でもよく知られているのは、彼がロシアのアニメーションスタジオ「ソユーズムリトフィルム」で制作した『霧の中のハリネズミ』(1975年、10分)や『話の話』(1979年、29分)です。

どちらも神秘的な雰囲気をたたえた作品ですが、とりわけ『話の話』の謎めいた構成について、長く議論されてきました。この作品について、『火垂るの墓』の高畑勲監督も一冊本を書いています(『話の話―映像詩の世界』)。

そんな彼の作品はいま、ほんの僅かな館数ではありますが、ノルシュテインの生誕75周年を期して、日本の劇場で公開中(2017年1月5日現在)です。その予告編がこちら。

そして、特集上映の公式サイトがこちら。“ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」”

これを見ていただければ、ノルシュテインの作品が、ふだん私たちが「アニメ」として思い浮かべるイメージとはかけ離れたものだということが分かると思います。彼の作品の特徴は、切り絵をコラージュのように組み合わせたり動かしたりしながら、独特な奥行きを醸し出す画面構成にあります。

ノルシュテインの作品は、宮﨑駿や高畑勲といったスタジオジブリの重鎮を始め、日本の多くのアニメーターに影響を与えていると言われています。

ぱっと見の印象としては、例えば『キツネとウサギ』(1973年、10分)に見られるような、ロシアの民衆的な美術を反映した画面構成は、あの『魔法少女まどか☆マギカ』で魔女が創りだす異質な空間のテイストと類似しているようにも見えます(この作品に出てくるウサギがニンジンを食べるシーンが僕は大好きです)。


Via http://www.imagica-bs.com/norshteyn/

実際に、『まどマギ』で魔女が創りだす空間の構成を担当した「劇団イヌカレー」の演出が、ノルシュテインの作品の影響を受けているとも言われているようです。(参考:山田視覚芸術研究室

しかし、こうした影響関係は画面の類似だけから読み取れるようなはっきりとしたものではありません。どちらも切り絵・コラージュを利用した作風という点で、同じ文脈に属する演出として扱うことはできます。ただ、「劇団イヌカレー」のメンバーに対して行われた実際のインタビューなどを読むと、こうした類似は明確に意識されているものではないようです。(参考:「カンバセーションズ」

ここまで名前を挙げてきたノルシュテインの作品は、すべてさきほど紹介した特集上映で一気に観ることができます。公開している館数も場所も少ないですが、もし興味を持たれた方がいたら、この冬休みや春休みを利用して行ってみてください。

また、映画を観てからノルシュテインについてもっと興味が出てきたという方には、この特集上映の開始とほぼ同時期に日本のアニメ研究者である土居伸彰さんのノルシュテイン論、『個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメーション論』も出版されていますので、こちらもチェックしてみたらいかがでしょうか。

この本は、さきほど謎めいた作品として紹介した『話の話』が持つ神秘的な構成や、ノルシュテインという作家の在り方を考察し、現代の商業アニメーション……ユーリつながりで言えば、人々に共有されやすい明確な物語と、集団制作による複雑な制作過程を経た『ユーリ!!! on ICE』のような……と対比することで、わたしたちがイメージする「アニメ(ーション)」の定義を問い直すようなものになっています。

ノルシュテイン個人の作品に偏ったものではなく、20世紀の始めから現代にいたるまでの、さまざまな「アニメ」の歴史を概観することができて、おトクな一冊(?)となっております。

ここまで、かなり駆け足でいろんなことに触れてきました。簡単な復習クイズでこの記事を締めくくろうと思います。

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一等兵です。東大の大学院で(ざっくり言って)哲学とサブカルについて学んでいます。日常の風景がより素敵に見えるような「視点」をみなさまに与えられるような記事が書ければいいのですけれど……。

 

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