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こんにちは、服部です。

テレビのドキュメンタリーや本などで、「当時の○○万円は現在の価値に直すと○億円」といったような解説をよく見かけますね。昔のお金の額面を今の価値に直すと、額面が高くなることが多くなっています。

一部の人には、漫画『アカギ』の「昭和40年の5億は現在の50億」が馴染み深いのかも。

昔オークションにかけられた骨とう品や美術品も、「当時の落札額○○円は現在の価値で××円」などと換算されますね。

ところで、同じ「5億円」という額面のはずなのに、どうして「昭和40年の5億は現在の50億」という事態が起こるのでしょうか。

たとえば昔稼いだ5億円を持ち続けたとして、5億円は5億円のままのはず。それが、「昔稼いだ5億円は実は50億円でした!」というのはおかしくないですか?

これは、結論を言えば「全体的にモノの値段が変わっているから」なのですが、今回はその仕組みを見てみましょう。

モノの値段が変わる

スーパーで食品のタグに書かれた値段を思い浮かべてもらうと、日によって値段が違いますね。日による差は微々たるものですが、数十年を隔てて値段の差をとってみると、どうでしょうか。

たとえば、お米10キロあたりの値段の全国平均は、1964年にはおよそ590円だったのが、今年は2580円に。

また、東京におけるタクシー初乗り運賃は、1964年には100円だったのが、2014年には730円に上がっています(今年1月に410円になりましたが、「2kmで730円」と「1.052kmで410円」なので、これは一概に安い高いと比較できません)。

一方で昔と今とを比べて、値段が下がった商品もあります。たとえば、ブラウン管テレビは1969年には15万円したのが1990年代には5万円くらいまで下がり、液晶テレビも今は登場当初よりかなり安くなっています。

物価指数

値段が下がったもの、上がったもの、変わらないものなど様々です。これらのいろんな物の値段をうまく混ぜて指標化したのが、ニュースでよく見る「消費者物価指数(CPI)」です。

「一定程度の同じ生活をするのに、どのくらいのお金が必要か」という全体的な物価の水準を、前年の水準を100として示しています。

たとえば、2015年を100としたときの1971年の消費者物価指数は31.5。2015年に10000円を使ってできる程度の暮らしをするのに、1971年には3150円しかいらなかったのです。

買うモノの量を固定してみたときに、それにかかる金額は今のほうが高くなっています。逆に言えば、同じ額面10000円あたりで買えるモノは、今のほうが少なくなっています。

昔のほうが1円あたりでたくさんのものを買えるので、今1万円するものも、昔は3150円で済んだということ。逆を言えば、昔の時点で3150円持っていたことは、今1万円持っているのと同じくらいの価値を持っていたことを意味します。

これが、冒頭で出した「昭和40年の5億は現在の50億」の説明です。「昔5億円使って買えたモノと、今50億円使って買えるモノがだいたい同じくらい」という推定から、5億=50億という一見謎な数式が成り立つわけです。

持続的にモノの値段が上がることをインフレーションといいます。なぜインフレが起こるのかは様々な説明がありますが、一般に経済成長しているとインフレになります。

日本では、1970年代前半までの高度成長期に経済成長に伴うインフレを、1990年代前半まではオイルショックや円高ドル安によるインフレを経験し、以降は不況によって物価上昇は落ち着いています。そのため、1990年代後半ごろと今のお金の価値はそれほど変わっていません。

今の1万円は1971年の3150円と書きましたが、1971年の1万円は、現在のいくらになるでしょうか?

物価指数から計算すると、モノの値段は100 ÷ 31.5 で、約3.17倍になっています。つまり、1971年に1万円だったモノの値段は、1万円 × 3.17 =3万1700円くらいになっています。

というわけで、「1971年の1万円は2015年のおよそ3万1700円」ということが推定できます。

日本はおおよそインフレを経験してきましたが、物価が下がるデフレの時期においても、「(昔の額面)×(今の物価指数)÷(昔の物価指数)」という計算式で、昔のお金が今の額面にしてどのくらいの価値かを推定できます。

具体的に計算をする機会はなかなかないと思いますが、巡り合ったときはぜひ、この記事を思い出してみてください。

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この記事を書いた人

Kosuke Hattori

東大経済学部を卒業しました。各記事が学びと発見への新たな入口になればと思います。よろしくお願いいたします。

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