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コジマです。

DREAMS COME TRUEの名曲『未来予想図II』の歌詞。

私を降ろした後 角をまがるまで 見送ると

いつもブレーキランプ 5回点滅

ア・イ・シ・テ・ルのサイン

直接言葉には表さない、さりげないメッセージ。ロマンチックだ……。

しかし、この記事ではあえてそこにケチをつけていこうと思う。ブレーキランプの5回の点滅で本当にそんな思いが伝えられるのか?

あらかじめルールを決めなければ難しい

このシチュエーションでブレーキランプを通してやっていることは情報伝達だ。情報伝達において重要なのは、情報を交換する人同士で「取り決め(プロトコル)」を定めておくこと。

難しい言い方をしたが、実は案外日常的にやっていることである。例えば女子高生は「りょ」「了解した」という意味を伝えるらしいが、それが通じるのは彼女たちの間で「りょうかい→りょ」の省略をプロトコルとして受け入れているからだ。

歌詞の中では、送り手と受け取り手が愛し合う関係であり、「ランプが5回点滅したらア・イ・シ・テ・ルのサインね」というプロトコルがあるからこそ、「私」は車を降りるたびに愛情を確かめられるのである。

これが見ず知らずの他人からの点滅5回だと、もちろんプロトコルの取り決めをしていない訳だから、それが何を表すのか分からない。かろうじて「5文字のメッセージなのかな?」まで行き着いたとしても、それが「ツ・カ・レ・テ・ル」「カ・ツ・オ・ブ・シ」などと受け取られてしまうかもしれない。

万国共通のプロトコル、モールス信号

では、ブレーキランプの点滅5回で万人に通じるメッセージを送るとなると、どの程度の情報を伝えることができるのか。

ブレーキランプのように、オンとオフの2つの状態しかもたない装置で情報を伝えるために生まれたのがモールス信号だ。モールス信号は、短点(・)と長点(-)の組み合わせでアルファベットやカナ文字を表す。

ブレーキランプを、点けてすぐに消したときを短点、少し長めに点けて消したときを長点とすれば、モールス信号をブレーキランプで表現できる。点滅の仕方を見れば短点と長点を表していることが分かるので、知らない人でもモールス信号と解釈してくれるはずだ。

さて、モールス信号でカナを表す方法(和文モールス符号)は次の通り。

カナを表すためには、1個から最大5個の点が必要になる。つまり、5回の点滅だと最悪1文字しか表せない!

実際、「ア・イ・シ・テ・ル」の「ア」はモールス信号で「--・--」だから、「愛」の2文字すら5回点滅では伝えられないのだ。

ブレーキランプ5回点滅、イヤのサイン

何とか5回で気持ちを伝えられないものか。少ない点で表せるのは次の文字になる。

  • 点1個→ヘ・ム
  • 点2個→イ・ヨ・タ
  • 点3個→ホ・リ・ワ・レ・ナ・ラ・ウ・ヤ

これで作れそうなのは、イ(・-)ヤ(・--)とか……。好きの正反対の感情だが、嫌よ嫌よも好きのうちというし、裏返しの愛情表現になりうる。


情報を伝達する上で、誰にでも正確に伝えようとすると、より長い符号が必要になる。見ず知らずの人に点滅5回で伝えられるのは「イヤ」くらいなものだ。

裏を返せば、短い符号で思いが伝わるのは心が通じ合っているからともいえる。イ・ヤをア・イ・シ・テ・ルに変えるのが愛、そういうことを『未来予想図II』は伝えたかったのかも知れない(多分違う)。

この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院情報学研究科2回/Twitter→@KojimaQK

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