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きのこ図鑑を開くと、ずらりと並ぶいろんなきのこの写真。その傍らには毒性を表す記載があります。「食用」「毒」……、当たり前のように書かれていますが、なぜそれがわかっているのでしょうか。

きのこの毒ってどうやって調べてるの?」そんな疑問を、今回は専門家にぶつけてみました。

初めまして。知りたいことは詳しい人にすぐ聞きたくなっちゃう、QuizKnock編集部の野口です。

早速きのこの毒の調べ方を取材すると、驚きの答えが返ってきました……。

「事故が起こって初めてわかる」きのこの毒

きのこの毒の調べ方は単純で、事故が起こって初めてわかります。

のっけから飛び出した、衝撃の事実。今回話をうかがったのは、千葉県立中央博物館の吹春(ふきはる)俊光・上席研究員です。『おいしいきのこ毒きのこハンディ図鑑』などの著書を持つ、きのこの専門家です。

まれに事前に調べて毒きのこだとわかる種もありますが、ほとんどの場合は、食べた人が具合が悪くなったり、亡くなってしまったりしたときに、成分や毒が調べられます

分析して毒だとわかるのではなく、毒の症状が出てから分析する……。どうしてそんな順番になっているのでしょうか?

さらに話を聞くと、その理由のひとつは多すぎるきのこの種類にありました。

きのこの大多数は「名前もついていない」

吹春先生によると、日本には1万種ほどのきのこがあるとされ、名前がつけられているのは2,500〜3,000種程度。大多数のきのこは名前もない、未知の世界です。

途方もない数のきのこが存在しているうえ、ひとつひとつきのこの成分を分析するにはコストがかかります。「毒」と一言でいっても種類はさまざまで、動物実験で中毒が報告されていても、人では中毒が起きないことも。

一方、多くの人が命を落としているのに、未だに毒の成分が特定されていないきのこもあるのだといいます。

▲人を死に至らしめる場合もあるスギヒラタケ。しかし、毒成分は現在まで不明となっている / via 厚生労働省

研究者の少なさからも、吹春先生は「薬の成分になるなど経済的な価値がないと、積極的に調べられることがない」と話します。

きのこ図鑑には「食毒不明」に分類されるきのこもありますが、これは誰も食べていないか、食べていたとしてもその結果が報告されていないものだそうです。まだ食べられていないものって、この世にいっぱいあるんだ……。

ハイリスクなきのこ、それでも人が食べ続けてきた理由は

そもそも、毒きのこはどれくらいあるものなのでしょうか。

吹春先生は「本当にざっくりとした分け方ですが」と前置きをしたうえで、名前が定められているきのこのうち、毒きのこは約10%、食べると命に関わるような猛毒を持つのは約1%だと教えてくれました。そこで私が予想外だったのは、次の一言。

おいしく食べられるきのこは1割くらいですね。それ以外は、毒はないけれどもおいしくはないものです。

きのこって「うまいか、毒か」くらいの認識だったんですが、「うまくないもの」が最大派閥だったなんて……。私たちが食べているのは、きのこのほんの一部に過ぎなかったのです。

▲おいしいきのこもあるけれど……。

毒もある、おいしいきのこに出会えるとは限らない――。一見リスクが高すぎると思えるきのこですが、どうして昔から人は食べ続けてきたのでしょうか。

それはもう、めちゃくちゃうまいからですね。

なんというシンプルな答え。でも確かに、きのこはめちゃくちゃおいしいです。

一度おいしいきのこの味を覚えると、やみつきになるのでしょう。
おそらく自然が豊かだった縄文時代などはもっと多様なきのこが身近にあって、その知識は人から人へ伝えられてきたのだと思います。
栄養効率もよいので、食料としての魅力が甚だあるんです。

身近にあって、栄養もとれて、しかもおいしい。そんな理由できのこは古くから人間の胃袋をつかんできたようです。

死亡事例もある野生きのこの食中毒

とはいえ、野生のきのこによる食中毒は後を断ちません。厚生労働省の食中毒統計調査によると、2020年度に報告されているきのこ類の食中毒は27件、患者数は71人におよび、死亡事例も発生しています。

▲毒キノコの注意喚起 / via 厚生労働省

吹春先生は、野生のきのこに関わる際に気をつけるポイントとして「きのこに詳しくない人は食べてはいけない」と話します。

1万種あるとされるきのこのなかでも、図鑑に載っているのはほんの一部で、判別も難しい。猛毒のきのこも結構身近に生えているので、必ずきのこの知識がある人についていくことが大切です。


そのおいしさから人を魅了し続けてきたきのこですが、私たちが知っているのは深遠なきのこの世界の一面でしかありません。自分が新たな毒きのこを身を持って発見する一人にならないためにも、野生のきのこを見つけたときは十分に気をつけましょう。

画像:吹春俊光先生 via 千葉県立中央博物館

この記事を書いた人

野口 みな子

QuizKnock編集部で記事の編集をしながら、記事も書きます。記事を通して「知る楽しさ」の入り口を広げていきたいです。インターネットや動物、ポップカルチャーが大好き。大学時代は宇宙物理学を専攻していましたが、星座に詳しくないのが悩みです。名古屋大学の大学院理学研究科卒。

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