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コジマです。

先日(もうだいぶ前だけど)『アイドルマスターシンデレラガールズ』の6thライブに参加してきた。ドームですよドーム。

11月11日のメットライフドーム公演day2は立ち見席で観ていた。位置としては下図の赤い丸の辺りで、ちょうどメインステージに向かって右端にあたるところ。

正真正銘の端っこでライブを見るというそうそうない機会で、私はあることに気がついた。音が遅い!

アイドル系のライブでは「ハイ!ハイ!」「フゥー!」のような掛け声、いわゆるコールを楽曲に合わせて入れる。その日も例によってコールを入れていたのだが、聴こえてくる会場のコールが自分のタイミングと全然合わない

遠くで同じように発せられたコールが自分のところに届く時間の分だけ、タイミングがずれる訳だ。広い会場で、端っこにいるからこそ感じたズレ。音にもスピードはあるんだよな、と再確認した日だった。

実際どのくらいずれていたのか、計算してみよう。

「ハイ!」1回分遅れて聞こえるよ

会場での位置関係の検証

ライブ会場の細かい位置関係は当然分からないので、調べて分かる情報から見積もる。

メットライフドームの天井は、公式サイトの情報により直径223mだという。私は天井の端から10mほど内側のところで観ていたと思うので、客席がある領域は直径200mくらいだろう。

それから、ライブの音がどこから聴こえてくるかは重要だ。スピーカーは複数あったが、一塁側と三塁側で音の到達速度が違うようにはしていないはず。今回のケースを考えるにあたっては、左右対称であれば細かい位置は問題にならないので、図ではステージ中央から音が聴こえてくるようにした。

つまり、私が音楽を聞いてから、私の向かいの人のコールを聞くまでの流れを図に示すとこんな感じになる。

誰かのコールが聞こえてくるまで

ステージを挟んで向かいの端にいる人は、同じ音を私と同時に聞いているはずである(1)。その人が発したコールは、200mの直径を伝わって私に届く(2)。よって、私がコールを発した時刻(1)と、向かいの人が発したコールが聞こえる時刻(2)の差は、200mを音が伝わる時間に等しい

気温t[℃]のときの音速は(331.5 + 0.6t)[m/s]で求められる。メットライフドームは外気が直接入ってくる構造のため11月はそれなりに寒く、ライブ当日は10℃くらいだったと思うから、当日の音速は338m/s

よって、200mを音が伝わる時間は200m/338m/s=0.59秒。一瞬のように思えるが、音楽の世界ではかなり効いてくる長さだ。

例えば、『シンデレラガールズ』で最も有名であろう『お願い!シンデレラ』はBPMが175、つまり1分間あたり175拍のテンポであるから、拍と拍の間は60秒/175=0.34秒。よって「ハイ!ハイ!」と2拍おき(=0.68秒)に入れるコールであれば、2個目のハイ!を入れようとする直前に向こうの1個目ハイ!が聞こえることになる。通りでズレて聞こえる訳だ。

ただし、ここで計算した0.59秒は差の上限であって、自分のところに届く声量のピークはもう少し速くなる。私の体感でも、遅れは1拍より少し長いくらいだったと思う。

観客20万人のライブでコールをしたい

伝説のライブ「GLAY EXPO'99 SURVIVAL」

ドームも十分広いが、実はもっと広い場所・多い観客で行われたライブがある。GLAYのいわゆる「20万人ライブ」だ。1999年7月31日に幕張メッセの駐車場で行われ、日本で最も多くの観客を動員したこのライブは、今でも伝説として語り草になっている。

GLAY EXPOの公式サイトによると、会場規模は縦700m、横264mであったという。ドームが2つすっぽり収まるとんでもない大きさだ。

一般的なドームの収容人数は4〜5万人。その5倍東京都台東区の人口とほぼ等しい人数が集まったというのだから驚く。もし、万が一この規模でアイドルライブをやったとしたら、コールはどのくらい遅れるのだろう。

そんな会場でコールをすると

ドームのときと同じく、横方向の遅れを計算してみる。気温25℃、音速346m/sの環境で計算してみると、遅れは0.76秒。『お願い!シンデレラ』換算で2.2拍分だ。

ただ、縦の遅れを計算すると横の遅れがどうでもよく思える。会場の最前列と最後列のタイミングを比べると、最後列のコールは「音楽が最後列に届く時間(1)→(2)」「最後列のコールが最前列に届く時間(2)→(3)」だけ遅れる。つまり距離にして700m×2=1400m分の差が生まれ、時間にして4.0秒

『お願い!シンデレラ』の11.8拍分で、「おー願いー(※)シーンデレラー」の※部分のフッフー!コール「夢は夢で追われない」が歌い終わった頃に聴こえてくることになる。

(実際は会場中央にもスピーカーが置かれるし、700mで人間の声は減衰するので、実際はここまで大きいラグはないと思われる)


大きい会場で行われるライブは実に楽しい。ステージから遠いと演者は見えないが、会場を見渡したときの非日常感は他の何にも変えがたいものがある。

20万人規模のライブはさぞ楽しいことだろう。今また実現するとは思いにくいが、頭の中で楽しんでおくことにする。

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この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院情報学研究科卒(2020年3月)※現在、新規の執筆は行っていません/Twitter→@KojimaQK

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