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コジマです。

暑い。今年は「災害レベル」の酷暑で、全国各地で40℃近い気温の日が続出している。私が住む京都も毎年夏は暑いのだが、今年はちょっと格が違うような気がする。

そんな「暑い日本」に対して、世界規模での懸念が間近に控えている。そう、2020年の東京オリンピックだ。開催期間は7月24日から8月9日までの一番暑い時期。もちろん野外での競技も多く、選手の熱中症が心配される。

この酷暑で改めて色々な対策が提案されているが、そのひとつが「打ち水」である。日本に古くから伝わる知恵を借りて、会場付近に水を撒くことで少しでも気温を下げたいという思惑だろう。

しかし、このことが報道されると批判が殺到。打ち水が効果を発揮したのは道が舗装されていなかった過去の話で、現代でやっても逆効果だという。

とはいえ、これだけ知られている方法が全く効果がないとも思えない。実際のところどうなんだろう。

打ち水の原理

打ち水で涼しくなる原理は次のように説明されることが多い。

液体の水が気体(水蒸気)に変化するにはより大きなエネルギーが必要である。地面に撒かれた水は、蒸発するときに地面の熱をエネルギーとして奪うため、地面が冷える。すると地面からの放射熱が和らいで涼しくなる

地面の熱(赤丸)が蒸発する水に奪われる

実際に打ち水の効果を調べる実験はいくつも行われていて、基本的には打ち水によって”地表温度が”下がることは間違いないようである。

一方、打ち水効果への反論として「熱を含んだ水蒸気が大気中に放たれたら結局気温は上がるのでは?」というものがある。こうした実験の考察では気温が1~3℃低くなったと報告しているものが多いが、気温や湿度の厳密な比較が難しい(同じ時間の別の箇所で計測する=環境が多少なりとも違う)ことは念頭に入れておきたい。

「現代の」打ち水

現代の打ち水で問題になるのは、昔とは地面の性質が違うことだろう。

アスファルトの地面は土の地面に比べて水を含みにくいため、打ち水によって冷やせる地面が表面近くに限られ、また乾き切るのも速い。よって土への打ち水に比べると涼しさは一時的で幅も小さいと考えられる。

アスファルト(左)は水を含みにくい

そもそも打ち水には処暑としてだけではなく砂埃を鎮める意味合いもあり、涼むことを目的として水を撒いていた訳ではないという指摘もある。

それはともかく、アスファルトの地面で打ち水効果を引き出すには、常に濡らし続けられるような仕組み、例えば道路の下にパイプを通し、常時チョロチョロ水を流し続けるなどの工夫が必要だろう。

街レベルでちゃんと冷える?

一番気になるのは、街レベルの広範囲に打ち水をしたときの効果についてはあまり検証されていないところだ。玄関の前に水を撒いて涼むのと街全体を濡らすのでは規模が全然違う。

ひとつ参考になるのが、2007年から岐阜県多治見市で行われていた、散水車による打ち水活動である。「湯気が立ち込めて暑い」という市民の苦情で中止になったといい、今回の件でも引き合いに出された。

これは確かに「やってみて、失敗した」という分かりやすい例ではある。ただし、「市民の感覚」による評価だったこと、打ち水をした場合としなかった場合を厳密に比較していないことも考慮して、「本当に逆効果だったのか?」と問うてもいいポイントである。

議論は冷静に

ということで、打ち水に効果はある/ない両方の立場から吟味してみたが、白黒はっきりつけるのは難しい。

私が調べた限りだと、打ち水によって地表温度が下がるのは間違いないが、今回のケースのような広範囲でも気温が下がるのか、また湿度が上がって不快になるのではないかについては科学的に十分調べられてはいない、という状況だと思われる。裏を返せば「効果はあるかもしれない」ということ。

従って、打ち水を検討しているという東京都を頭ごなしに批判するのは違うんじゃないかな……とは思うところである。都と市民と互いに冷静に議論を進め、少しでも「涼しい」オリンピックになることを願う。

追記

8月27日には東京都による実証実験が行われていた。あくまで「路面温度が下がる」という従来どおりの結果になっていたが、それ以外のデータも今後まとまるということで注目だ。

参考文献

この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院情報学研究科2回/Twitter→@KojimaQK

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