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監修:今村文彦教授(東北大学災害科学国際研究所)


2021年3月、宮城県沖でマグニチュード7.2の地震が発生しました。地震が発生したのは18時09分、そのわずか2分後の18時11分には、気象庁から津波注意報が発令されました。

津波注意報・警報が出たら直ちに高いところへ原則徒歩で避難することが大切です(※)。しかし、いつ地震が起きるかわからないのに、なぜ津波が来ることがこんなに早くわかるのでしょうか?

この記事では、東北大学大学院で津波防災を研究している私が、地震直後に津波の有無や高さがわかる秘訣早押しクイズの例を交えてわかりやすく解説します。さらに、いざというとき、どのように行動したらよいのかもしっかり解説します!

※大きな地震や長くゆっくりした地震を感じたら、警報が出るのを待たずに避難することが必要です。震源が陸地の近くの場合は津波警報が間に合わない場合があります。

目次

秘訣は約10万通りの事前のシミュレーション
 ・早押しクイズは、膨大な対策と瞬時の判断
 ・膨大な対策:約10万通りのシミュレーション
 ・瞬時の判断:地震を素早く感知して、データベースの中から最適解を見つけ出す
津波警報が出たらどうすればよい?
 ・「巨大」や「高い」は緊急事態
 ・津波避難で大事な3つのポイント
予報は随時更新される
 ・巨大地震では断層のずれが3分以上かかることがある
 ・発生した津波を観測して警報の精度向上へ
 ・第一報の限界を知って迅速に避難を
おわりに

秘訣は約10万通りの事前のシミュレーション

気象庁は、地震が発生したら、2分以内に地震の位置や規模を推定します。その後、事前に構築した津波予報データベースから地震の位置と規模に対応する最適なケースを選択して、津波警報・注意報を発令しています。

地震活動等総合監視システムEPOS
image / Via 気象庁のHP

これにより、地震発生直後わずか3分以内に各地の津波の高さや到達時間を公表することができます。実はこのスピードで速報が出せる秘訣は、早押しクイズにとても似ています。予報の仕組みを早押しクイズで例えて解説しましょう。

早押しクイズは、膨大な対策と瞬時の判断

QuizKnockの動画をみると、「なんでそんな早く答えがわかるの?」と思う場面が多々あります。私は、事前の膨大な対策本番での瞬時の判断力の2点に秘訣があると考えています。

早押しクイズ前の膨大な対策と本番での瞬時の判断

実はこれが津波予報に挑む気象庁が行っていることと、とても似ている構造をしているのです。事前の対策と本番のそれぞれについて順にみていきましょう。

膨大な対策:約10万通りのシミュレーション

約10万通りのシミュレーションをデータベース化

早押しクイズでは、他の人より早くボタンを押す必要があります。そのためには、事前に様々な知識を学習し、あらゆるクイズの問題パターンと答えのパターンを勉強して、脳内のデータベースに保存する必要があります。

気象庁も同じことを行っています。事前にあらゆるパターンの地震(問題)とそれぞれの地震が起きたときの津波の高さや到達時刻等(その答え)を計算して、津波予報データベースに保存しています。

津波予報データベース
image / Via 気象庁のHP

気象庁は、日本近海のあらゆる地点で様々な大きさの地震が発生した場合の全てのパターンにおいて、物理学に基づいた数値シミュレーションを約10万通りも行って津波の高さや到達時刻を推定しています。

瞬時の判断:地震を素早く感知して、データベースの中から最適解を見つけ出す

緊急地震速報を利用するともっと早く警報が出せる

クイズにおいて、問い読みの一言一句に耳をすませて、聞き取れた問題文からその続きを推測して答えを導き出します。

同じように、気象庁も地球(問い読み)から発される地震波(問題)を瞬時に検知し地震の位置や規模を推定して、発生した地震の位置や規模などに対応する津波の予測結果をデータベースから検索して導いています。

気象庁の津波予測の脳内と観測網
image / Via 気象庁のHP

津波警報が出たらどうすればよい?

ここまで、津波警報・注意報を出す仕組みについて見てきました。では、実際にどのような形で情報が発信されるのか、私たちはどのように行動したらよいのかについて説明します。

「巨大」や「高い」は緊急事態

津波警報・注意報の種類

通常は、5段階の数値を用いて大津波警報・津波警報・津波注意報が発表されます。ただし、巨大津波の場合は前述のように3分では精度の良い予測ができないため、「巨大」や「高い」という表現を用いて緊急事態であることを伝えることになっています。

津波の高さを「巨大」と予想する大津波警報が発表された場合は、東日本大震災のような巨大な津波が襲うおそれがあります。直ちにできる限り高いところへ避難をしましょう。

津波避難で大事な3つのポイント

この記事で触れてきた津波からの避難のポイント3つにまとめました。

1)すぐに逃げましょう  津波警報・注意報が出たり、強い揺れやゆっくり長い揺れ(たとえ小さな揺れでも)を感じたらすぐに避難を開始しましょう。揺れが小さくても津波がくる場合や、震源が陸地の近くで警報・注意報が間に合わない場合があります。 ①率先して逃げる
2)「遠く」より「高く」に、原則徒歩で逃げましょう  津波のスピードは早いため、津波が到達しない安全な高台に逃げるようにしましょう。すでに地震により建物や道路などが被害を受けている場合があります。自動車避難では過去深刻な渋滞が発生しているため、原則徒歩で逃げるようにしましょう。 ②「遠く」より「高く」、原則徒歩で
3)避難したら戻らないようにしましょう  津波は長い時間くり返し襲ってきます。津波警報・注意報が解除されるまでは、避難を続けましょう。東日本大震災では、避難場所への避難後に沿岸部に戻ったために犠牲になった方がいます。 ③避難したら戻らない

予報は随時更新される

巨大地震では断層のずれが3分以上かかることがある

今紹介した予報技術は世界トップ水準の技術ですが、100%予測できるわけではありません。地震直後だけの情報では、十分な精度で予測できないことがあります。

例えば、マグニチュード8を超えるような巨大地震は、揺れの原因となる断層のずれが3分以上かかる場合があるため、3分以内に規模や位置を正確に予測することができません。まだ答えが確定していない状態ということです。

そのような場合、気象庁はその海域における最大級の津波を想定して、 大津波警報や津波警報の第一報では、津波の高さを「巨大」や「高い」で発表し数値では発表しません

発生した津波を観測して警報の精度向上へ

ここまでは発生した地震の情報を使った予測について説明してきました。それ以外に、実際に発生した津波を観測するアプローチも行われています。発生した津波をリアルタイムで観測して、解析を行い、津波警報を随時修正しています。

気象庁と国内の研究機関の観測網。三角のクネクネしているものはS-netという平成28年に運用開始された観測計
image / Via 気象庁のHP

第一報の限界を知って迅速に避難を

3分以内に出される第一報は精度が高いと言えない場合があります。気象庁は、第一報を出した後も、様々な観測データを分析をして津波警報を更新しています。

ただし、続報を待っていては避難が遅れてしまいます。私たち住民は、第一報の津波より高い津波が来る可能性を理解して、続報を待たずに迅速に避難を始めることが大切です。さらに、避難開始後に情報が更新されることもありますので、情報入手手段を確保しましょう。津波警報などの情報を正しく利用していくことが大切です。

また、地震からどんなに時間が経過しても、津波警報・注意報が出ている間は、まだ津波の危険があるので避難場所から戻ってはいけません。

おわりに

津波警報・注意報の第一報がすぐに発表される仕組みや、どのように発表されるかを紹介しました。災害はたくさんの人を一気に悲しませてしまうものです。一人ひとりが津波警報を正しく理解し、適切な避難行動をとることで、災害で亡くなる人・悲しむ人が減ることを願っています。

近年は、スーパーコンピューターを用いてすぐに津波の浸水予測や被害予測を行う技術や、AIを用いて一般のパソコンでも津波予測ができる技術など新しい技術が開発されています。

技術を使いこなすのは私たち人間です。技術を上手に活用して災害から身を守っていきましょう!

参考文献

この記事を書いた人

ユウ

東北大学大学院の渡邉勇です。津波防災や災害伝承を研究しています。楽しんで読んでいたら自然と知識が身につく記事を目指して、私自身も楽しみながら記事を書いていきます。

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